触覚ディスプレイの種類


振動子アレイ
小型の振動子を配列することによって触覚ディスプレイを構成する。振動子には電磁型、圧電型のものが開発されている。現在、指先や手掌、腹部、背面部などで使う振動子アレイが作られている。ディスプレイの多くは、体の使用部に固定して使う。すなわち、受動的触知に基づく利用方法をとる。
振動子の配列が空間次元を、振動子の駆動周波数が時間次元の情報を提示する。ディスプレイ構成に関する重要なパラメータは、配列間隔、振動周波数、振幅(ストローク)、パワーなどである。原理的には、振動子を密に配列すればそれだけ細かな情報を、また、高い周波数で駆動すればそれだけ多くの情報を提示できる。
しかし、触知覚には時空間特性が伴い、配列が高密度過ぎても、また、駆動周波数が高過ぎても無意味になる。触覚の時空間特性によると、配列の目安となる間隔は触2点弁別閾(指先で約2mm)、駆動周波数は振動刺激の最小弁別閾(指先で約200Hz)程度である。さらに、振動子の振幅は大きく、かつ、パワーが強い方が明確な情報を提示できる。
このような型の触覚ディスプレイはオプタコン視―触覚変換器触覚テレビ触覚マウスタクチュアルボコーダなどに使われている。
図は手の平にフィットするように面を湾曲させた装置である。現在、パソコン画面のカーソル位置を提示するのに使われている。

手の平用ディスプレイ

この触覚ディスプレイの主要な仕様
触覚ディスプレイの大きさ75 mm x 55mm
触知ピンの駆動機構ソレノイド
触知ピンの本数7 x 10
触知ピンの間隔7 mm
触知ピンの径1.8mm(円形)
触知ピンのストローク約5mm
触知ピン駆動周波数最高80pps
ディスプレイの特徴ダイナミック型、手の平で使用

上記の触覚ディスプレイはソレノイド素子を使用しているため、持ち運びには適さない。そこで、可搬型の触覚ディスプレイも試作されている。下図は圧電型振動子を使用した触覚ディスプレイであり、会話型聴覚代行器の情報提示部に利用されている。このディスプレイは腕に巻き付けて使用する。

腕装着型ディスプレイ

この触覚ディスプレイの主要な仕様
触覚ディスプレイの大きさ46mm x 163mm
触知ピンの駆動機構圧電素子(PZT)
触知ピンの本数9 x 7
触知ピンの間隔4mm
触知ピンの形状1.5mm(円形)
触知ピンのストローク約200マイクロm
触知ピン駆動周波数200pps
ディスプレイの特徴ダイナミック型

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触知ピンアレイ
機械的素子を上下に駆動して全体的には凹凸を形成するものを指す。触知的には振動子アレイがバイブレートするのに対して、ピンアレイの場合は凹凸した素子は時間的にはそのままの状態を保つ。したがって、ハプティック知覚によってこの型ディスプレイを使用する。素子には電磁型のものと圧電型のものとがある。
現在、ペーパーレスブレイルに1ユニットが6ピンないしは8ピンからなるものが、また、パターン情報表示用には複数のピンで構成された2次元型パターン情報提示装置3次元型パターン情報提示装置が作られている。
点字情報表示用などの場合は、触知ピンを常に一定高だけ(たとえば、2m程度)上昇させる。一方、音声では表現し難いパターン情報を伝達するためには、ピンを多段階に保持する素子によって3次元表示するディスプレイが要求される。
特に、パターン情報表示用の場合にはピン配列の間隔、ピンの上昇高、触知時のピン耐圧、ピンの形状などがパラメータとなって、情報伝達の正否を握る。これらは、触覚の時空間特性に依存する。

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ウォータジェット
細いノズルから水流を噴射すると、水鉄砲に当たったときのように触覚では点刺激を感じる。ノズルを空間的に操作すれば点運動を描かせることが可能になる。また、バルブによって水流を開閉すれば断続的に時間制御も可能になる。このような原理から構成された触覚ディスプレイがウォタージェット型装置である。水流を直接皮膚に投射すると濡れてしまうため、薄いゴム膜を介して触覚刺激が加えられる。図に示された装置は前額部に情報を提示する。小型のコンプレッサーによって水流を加圧する。前額部に投射された水は循環して再利用される。

ウォータジェット装置

この触覚ディスプレイの主要な仕様
触覚ディスプレイの大きさ100mm x 120mm
触圧の駆動機構水流噴射
触圧の制御電磁バルブ
触点の大きさ約2.5 mm(径)
触点の制御周波数約0.6秒
ディスプレイの特徴スタティック型 、触点運動、前額部で使用

この型のディスプレイは受動的触知によって情報を受ける。刺激点の運動による触パターン提示は極めて理解しやすい。しかし、この装置は水という液体を使わねばならないため、操作に問題があるし、温度変化の影響も受ける。このような理由から、現在、普及するには至っていない。

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エアジェット
機械的刺激を提示する方法の他に、細いノズルから空気流を噴射するディスプレイが 試作されている。Blissらは指先部に複数(8 x 6)の空気圧刺激装置を作成した。原理はボールベアリングの上下によって、気流の開閉を行う。気流の開閉に対する応答は極めてよいとされ、数10ミリ秒の刺激を提示することも可能であるとされている。この方式はBlissらがオプタコンを開発する前の触覚実験に使って多くのデータを得たが、空気圧を発生させるためのコンプレッサを必要とするため、ウォータジェット型のディスプレイと同様に普及はしていない。

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電極アレイ
電気刺激によって情報を伝達するために電極アレイが使用される。複数個を配列することによって空間次元を、個々の電極を駆動するパルス電流によって空間次元を構成できる。刺激点の定位を明確にするためには同心円型がよいとされている。その理由は同心円状の電極の一方から他方へ電流がながれ、広く拡散し難いからである。うまく情報を伝達するためには機械的刺激の場合と同様に、電極間の間隔、電極に印加する電流特性など電気刺激による人間の受容特性が関係する。

図はゴムシートに同心円電極を搭載することによって構成された電極アレイを示 し、広い皮膚の領域に情報を伝達するため腹部に装着する。

小型電極によるディスプレイ

この触覚ディスプレイの主要な仕様
この触覚ディスプレイの大きさ220mm x 230mm
電極の駆動機構コンデンサ放電
電極の個数20 x 20
電極の大きさ 同心円:7mm(外形), 4mm(内径)
電極の間隔10 mm
瞬時提示電圧約80V
電極駆動周波数最高150 pps
ディスプレイの特徴ダイナミック型、腹部装着

電極アレイは電極構造が単純で軽量化し易いため、駆動回路をチョッキなどに植え込んだ歩行支援装置に利用されたこともある。しかし、電気刺激は、ごくわずかの電流増加で痛覚を刺激することもあり、安全のため絶縁方法を確立するという必要性もある。また、利用者が電気刺激を嫌うという傾向もあるため、あまり感覚代行器としては普及していない。

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